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蓮華院金剛寺
座主 木原秀成
 
 
一喝説法
 
すばらしく変身しよう
2016.01
 
 今すぐ始めなさい
 
キリスト(救い主)と呼ばれ、十字架に磔になって処刑されたイエスの生涯は、波乱万丈であったようです。

聖書によれば、彼の最初の活動のひとつに弟子集めがありました。

非常に短い文章ですが、興味深い内容が含まれています。

イエスがガラリヤ湖畔を歩いていて、シモン(のちのペテロ)とその兄弟アンデレが網を打っているのを見ました。

そして彼らに「私についてきなさい。あなた方を人間をとる漁師にしてあげよう」と言うと、彼らはすぐに網を捨ててイエスに従っていきました。

また少しして、ゼベタイの子ヤコブとその兄弟ヨハネが舟の中で網を繕っているのを見て彼らを招くと、兄弟は父ゼベタイを雇い人たちと一緒に舟において、イエスについて行ったというのです。
(マルコ福音書一‐十六〜二〇)

当時、地方の漁師とはいえ、雇い人がいるほどですから、社会階級も決して悪くなかったでしょうし、多少知識階級の人だっただろうとさえ言われています。

そのような人物が、自分の職業や商売道具や親や雇い人まで捨てて、イエスの弟子になったというのですから、イエスの話に余程魅力を感じたのでしょう。

それにしても、「二、三日考えてから」ではなく、「すぐに」です。

私たちは、子どもの頃から常に、最も抵抗の少ない自分が傷つくことの少ない道を歩むことになじんでいます。

そのような習慣がいつの間にか自分の考え方に大きな影響を与えていて、自分にとって素晴らしいと思うような助言をいただき実行しようと思っても、なかなかすぐに始められません。

なぜ、多くの人は「今すぐ」始められないのでしょうか。

 
 信念と自尊心
 
私たちは、大した抵抗を感じずに自分の考えを変える場合がよくあります。

ところが、人から誤りを指摘されると、腹を立てて意地を張ってしまう…。

何かのことで失敗した場合も、自分でそれを認めることができる時は素直に謝ることができても、他人から指摘されるとなかなか素直になれません。

自分にとって為になる良い話でも、人から言われると場合によっては「はい、そうですね」と素直になれない時がある…。なぜなのでしょうか。

多くの人たちは、信念と自尊心をはき違えている場合が多いのです。

生きていくうえで、様々な体験を通じて自分の信念というものを作りあげ、その信念にもとづいて行動する、これは決して悪いことではありません。

ところが、誰かがそれを変えさせようとするとがむしゃらに反対したり、もっと素晴らしいアイデアであってもなかなか受け入れようとしない。

この場合、その人が重視しているのは「信念そのもの」ではなく、「危機に瀕した自尊心」なのです。

特に、目下の人や自分より地位が低い人から良いアイデアを聞かされた場合など、衝動的にそれを拒否することが少なくありません。

「私の」というなんでもない言葉が、実は世の中においては非常に重要な意味を持ち、自分を生かしも殺しもするのです。

私の車・私の服・私の生き方…。下に何がつこうとも、「私の」という言葉には同じ強さの意味がこもっています。

自分のものであれば、車であろうと時計であろうと、習得した知識であろうと、とにかくそれがけなされればひどく腹を立てる。

なぜかといえば、自分にとってそれが真実と思い馴れてきたもの、正しいと思い込んできたものを、それが間違っていたとしても、未熟であったとしても、いつまでも信じたいのです。

だから、信念を揺るがすものが現れれば憤慨し、何とか口実をつけて元の信念にしがみつこうとします。

多くの人は、常に自分を正当化するための信念を作り上げている場合が多いのです。

一生をそのように生きる人さえ少なくありません。

そして、人生の終末を迎える時に、「自分の生き方は間違っていた」と気づいてもすでに後の祭りなのです。

 
 もっと素直になろう
 
経験の中から、あるいは書物を通じて学んだ中から、いつしか一番都合のよい「信念」を作り上げてしまい、生活や行動のすべてをその信念の基準にもとづいて決めてしまいがちです。

それが自分にとって一番抵抗のない生き方になるからです。

そして、それがいつしか自尊心になってしまうのです。

もっと自分を大切にしようと思うなら、たった一度しかない人生を価値あるものにしたいなら、自分の心を大きく開いてみることです。

自分の小さな自尊心に拘らず、素直に人の意見に耳を傾けることです。

そうすれば、自分をもっと成長させてくれる材料は、無限に自分の周りにあることに気づくはずです。

また、そうすることが人生を最高に輝かせるばかりか、他人の人生も素晴らしいものへと導いていけるようになるのです。

イエスキリストの「すぐ始めなさい」という言葉を信じ切れたペテロやヨハネは、結果として歴史に名を残しました。

それは、自分のこだわっている信念や自尊心を捨てたわけではなく、素直になって聞いたからなのです。

だから、イエスキリストという人物の素晴らしさに気付いたのです。

私たちはひとりひとりが尊い存在であり、自分にしか与えられない特質をいただいてこの世に生を受けています。

自分自身の周りからすべての人が去っても、自分からは決して去ることも逃げることもできません。

だったら、もっと素晴らしい自分を目指して変身しようではありませんか。

新しい年の始まりに、未来の素晴らしい自分を夢に描いて…。

   合掌


 
   
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